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きらきらと音を奏でるように光って

宝塚歌劇・星組大劇場公演「ロミオとジュリエット」B日程

星組大劇場公演「ロミオとジュリエット」ようやく観劇できた。今日は初日からもう10日以上経ってて、B日程の初日だった。
緊急事態宣言下のため、今回の公演は1階席のみの座席販売に限られている。当然まわるチケットもまわってこない。おかげさまで1週目のA日程は見そこねてしまった。憎むべきは新型ウイルス・・・!

ロミジュリの宝塚での上演は2013年星組大劇場公演以来となるわけですが、わたしは宝塚での初演から掻い摘んで再演のたびに観てきて外部版も初演と一昨年の再演を拝見しています。しかしもっとも印象深いのは2012年月組大劇場公演版。龍真咲さんのロミオ、愛希れいかさんのジュリエット、明日海りおさんのティボルトのバージョン。この公演はトップスターである龍真咲さんのトップお披露目公演でありながら、2番手格の明日海りおさんを「準トップ」と称し、ふたりのロミオとティボルトの役替わりという度肝を抜いたキャスティングが当時の話題に(良くも悪くも)なりました。なので、明日海さんがロミオを、龍さんがティボルトを演じたバージョンもあるんだけど、わたしは龍さんがロミオを、明日海さんがティボルトを演じたバージョンのほうが好きでした。

演目自体がとても好きな「ロミオとジュリエット」ですが、映像ソフトを購入したのはこの2012年月組版のみだったりするぐらい、とっても好きで、わたしのロミジュリの基盤はこの再演にあるといっても過言ではないほど。

さて、今回の星組大劇場公演では2番手格から若手スターに至るまでの男役陣で、ティボルト、マーキューシオ、ベンヴォーリオ、死を役替わりしています。
うっかりBパターンがマイ初日になってしまい、どうなるやらと思っていましたが、観終わっての感想、

Bパターンがマイ初日だったの大正解だったかもしれん!!!!!!!!!


なので、我ながらヅカオタ逞しい生き物だな。笑 と改めて。

  • 瀬央ゆりあさん(Bパターン・ティボルト役)

かっっっっっこよすぎた。そもそもわたし、ティボルトというキャラクタが大好きすぎるんですけど過去観てきたどのティボルトよりもど真ん中好みすぎてちょっと今日鼻息荒くなった自覚ある。ティボのソロナンバーって宝塚版だと3曲あるんですが2幕の「今日こそその日」がわたしはいちばん好きで。1幕は繊細で脆そうなティボさまの内面を感じさせた瀬央さんが2幕のこのナンバーで狂ったように目が笑って怒り心頭してるの最高に、、、、胸ときめきました、、、、、なんかもう震えてた。客席でわなわなしてた、ずっと。(危険)

  • 天華えまさん(Bパターン・マーキューシオ役)

天華さんも瀬央さんも紅さんDNAのひとだと思ってみてるスターさんなので、2幕決闘の場面でふたりが向かい合って罵り合ってるの観ながら「紅DNA同士のティボマキュやばいしぬ」って頭の中ぐっちゃぐちゃになっていたヅカオタ手挙げて〜〜!!!はーーーーい!!!!!!!!(大きく挙手)
マーキューシオって今までの公演だとモンタギューの中でも一匹狼的存在感というか、大公の甥だっていうバックボーンも台詞で描かれるちょっと特異なキャラクタだと思ってるんですけど、天華さんのマキュは綺城さんのベンヴォーリオとのコンビ感・ニコイチ感がすごく強くて(わたしがあかぴー推ししてるせいも多分にあると思うんだけど)、コンビ厨のオタクはこのベンマキュ好きじゃないかなっておもう!

  • 綺城ひかりさん(Bパターン・ベンヴォーリオ役)

ロミオ役より下級生がこの役を演じたパターンってこれまでの上演の中でもあまりないイメージなので、すごく新鮮だった。上級生や同期が演じるとお兄さん的存在になりがちなベンだけど、下級生が演じるとこんなにロミオやマキュと対等な感覚のところで存在出来るんだなあってのはすごくおもしろい発見だったし、このキャラクタの奥深さを感じた。Bパターンのキャスティングの何がこんなに魅力的だったかって、ティボルトもマーキューシオもベンヴォーリオも、そしてロミオもジュリエットも、この物語の中心にいるキャラクタがみんなちゃんと「子供」だったことなんじゃないかと思って。この物語の屋台骨の部分は「子供」と「大人」を描いていることなんじゃないかというのはずっと思っていて、その思いをより強くしたのが直近で観た一昨年の外部版だった(大人チームのキャスティングが個人的にものすごく魅力的だった)。ベンは唯一この中心にいる「子供」の中で物語の先まで生きていく人物で。だからこそ、敢えて子供と大人の中間にいるような、ちょっと大人っぽさが必要なキャラクタである必要があったんだと解釈してて。だから、綺城さんのベンを見て、「子供」として成立するベンをほぼ初めてに近い状態で観たかもなぁと思ったりもして。ちょっとここはまだ読み切れてない印象で終わったのでもうちょっと掘り下げたいなと思いました。

  • 愛月ひかるさん(Bパターン・死役)

2番手さんが死を演じるのって初めてだと思うんですけど、観て納得の存在感の大きさ!
宝塚版の死って常に愛と対の存在なので、これまでは若手スターの役という印象が強かったですが、敢えて愛と対等なものではなくグッと2番手さんの存在感で死を大きく印象づけてしまうことで物語の比重がものすごく違って見えたし、より外部版寄りになったなあという印象でした。
個人的な印象なんだけど、外部版で一昨年観た宮尾俊太郎さんの死にすごいイメージ重なった。醸し出す雰囲気とかすごい宮尾さんと同じもの感じたし、場面での異質感とかもすごい外部版の男性ダンサーさんぽいな〜って。
1幕の「僕が怖い」ではロミオは漠然と己の中に抱える「怖さ」を提示してると思うんだけど、今までの死はそのロミオの抱える「恐怖の象徴」に見えていたものが、2番手さんの存在感と、愛月さんの持ち味である大人っぽさ、シャープさ、硬質な魅力も相まって子供であるロミオがどうあがいても乗り越えられない憎しみの隔たり、壁の大きさ、社会という名の大人たちから抑圧されている感覚、みたいなものを感じさせるナンバーになっていて、ロミオが「死ぬのが怖い」の言葉の奥に何を抱えているのかという解釈がこんなにも死との対比で変わるのは、キャラクタと芸名の二重構造があっての宝塚版ならではの部分もあるのかもしれないな〜と思ってすごくおもしろかった。興味深いなとおもいました。
あと、愛月さんの死は踊っているときの動きはすごくキレ味良いんだけど、ただ群衆の後ろを歩くとき、後ろに立ったまま前面で起こっていることを傍観しているとき、とかの動きがすごいねっとりしてて、そこのギャップが蛇みたいでおもしろいな〜とおもいました。魅力的なんだよねえ、そういう魅せ方も2番手さんさすがだなって思った。

  • ロミオ(礼真琴さん)

礼さんは初演からこの作品に携わってるし、2013年の再演のときに新公でロミオ役を1度演じているのでその時の本役さんみたいなロミオになるのかなって漠然と思っていたんですが、思っていたよりずっと「礼真琴の演じるロミオ」だったな〜。初日のあとのメディア取材で「ロミオはジュリエットに振り回されている」という解釈をしている話が出ていたので、『なにその面白そうな解釈は?!裏切られた〜、楽しみ増すな!』とは思ってたんですよ。なんか、ちゃんと「子供のロミオ」だったなって思った。子供だから、ジュリエットに振り回されて、子供だから、一度このひとだと思ったら譲れなくて、子供だから、友達が死んだら逆上してしまって、子供だから、愛する人の命が途絶えたと知ったとき己の死まで突っ走ってしまう。ああ、ちゃんとロミオがロミオとして「子供」だったロミオだったなって。子供っていう言い方は敢えて親たちをこの物語においての「大人」とするためにそう呼んでるんですけど、その子供の「若さ」とか「生命の瑞々しさ」っていうのが大人との対比を描くときにこの物語においては重要なパーツだと思ってて、大人たちが黙って何も動かないで見て見ぬ振りをしてやり過ごす中で子供たちが行動を起こして、未来が変化していくっていう物語だと思うから。ロミオが子供であること、子供として存在していることが明確になっていることってすごく大事なんだろうなって思うんです。きっと家族のこと、自分の生まれ住んでいる街のこと、周りの友人や仲間たちのこと、自分自身の未来のこと、ロミオは生まれながらにずっと迷って悩みながら生きてきて、葛藤することも他人には見せずに抱える癖もついてしまったようなひとなんだろうなっておもうんだけど。迷わずに直感で向かい合えた初めてがきっとロミオにとってはジュリエットだったんだろうなって。そんなまっすぐさが光るロミオだった気がします。

  • ジュリエット(舞空瞳さん)

外部版にいままででいっちばん近いジュリエットだった印象。気が強くて頑固で、こちらもちゃんと「子供」だった。
「親には一度も逆らったことない」って歌っているけど、ちゃんと親の前では仮面をかぶっていい子にしてやり過ごすことを身につけるずる賢さと、実の親以上に近い存在である乳母にはそのぶん逆らいまくってるんだろうな、が透けて見えるようなジュリエットだった。笑
そして、家族に見せる表情と、ロミオに見せる表情の違いの激しさ。笑
なんかたぶん、このジュリエット、親のことそんな大事に思ってないんだろうな〜っていう印象だった。ロミオにはものすごく恋をしている少女の表情で、ロミオとロミオ以外の人との間で差が激しいことにたぶん本人無意識なんだろうな、みたいなジュリエット。笑
すごいおもしろかったな〜〜〜。でもバルコニーの暗転前はすごいかわいかったです。あの暗転前の演出は宝塚版ならではなので、娘役さんの特権!って感じがしてすごく好きですね。あと天国のシーンもすっごいかわいい。舞空さんのジュリエットは天国のシーンでロミオにかなりちょっかいというか挑発めいた振りがついていたので、親の手前静かに部屋で読書しているけど本当は外で遊びたい活発さのある少女だったんだろうな〜と思いました。